知らなかった僕の顔
「僕はさあ、さなえちゃんの気持ちわかるなぁ」
僕は、しみじみと言った。

「お前な…俺は傷ついたんだぞ。そりゃ下心はあったよ」

「お前、ギラギラしてたもんな。恐かったよ」

「まあな…でも、あの夜は単純に楽しかったんだよ。ヤレなくても別によかったのにな。なんかあからさまに拒否されたような気分になって落ち込んだよ。それまでの楽しかった空気が嘘みたいに、一瞬で消えたんだぞ」

「ああ…わかるよ。でも電話番号は聞いたんでしょ?」

「聞いてねえ…」

「そうか…」
僕なんて、教えたのにかかってこないよ…と心で呟く。

「お前は?あのあと一人で帰ったのか?」

ドキ。
「ん?ああ…森若ちゃんを送って帰ったよ」

「ふーん…ヤッたの?」

「そんなんじゃないよ。ただ…」

「ただ、何?」

「楽しかった…」

「だよなあ」
長谷川が、力なく笑う。

「森若ちゃんてさ、なんか面白いんだ。それで、その面白さが可愛いさに繋がるっていうか…」

「ま、確かに奇抜な格好してたよな。でも俺、森若ちゃんのこと、あんま覚えてねえな。森若ちゃんて、印象が薄かったな」


えええぇぇーっ??!!
嘘だろ?
あんなに興味を惹く女の子、そうそういないぞ?


僕は、長谷川の森若ちゃんに対するアッサリ感を心底驚いた。

なんなら全ての男がライバルだ、くらいに思ってた。

それほどに僕は、森若ちゃんを魅力的に思ってる。


< 43 / 203 >

この作品をシェア

pagetop