知らなかった僕の顔
シャワーのノズルを固定して、雨に打たれる子犬のような気分を演出し、立ったままの姿勢で頭から浴びる。


いつもなら何も考えずにいられる時間だけど、今日は頭の中が森若ちゃんのことでいっぱいだった。


森若ちゃんは、本当のところ僕のことをどう思っているんだろう。

僕が一人で盛り上がっているだけで、優しい彼女はそれに付き合ってくれているだけかもしれない。


街の中を歩く僕と森若ちゃんを想像した。

楽しみな気持ちと、不安な気持ちが交錯する。


僕は、自分の白くて細い腕を握った。


こんな貧弱な腕の男と歩く女の子は、それを恥ずかしいと思うのかもしれない。

多かれ少なかれ外見に関するコンプレックスは男にもある。


だから僕は例えば女の子が、「強いくせ毛が気になって髪をいつも一つにまとめている」とか「足が太いからスカートが穿けない」と真剣に悩む気持ちをくだらないとは思わない。


降り注ぐ無数の水滴は、細い腕と薄い胸板をたえまなく弾き、初めての森若ちゃんとのデートを前にした僕に色々なことを考えさせた。


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