知らなかった僕の顔
シャワーを止めると、部屋のチャイムが鳴っているのに気づいた。

僕は体をろくに拭きもせず、慌ててさっき脱いだTシャツとジーンズを着て玄関のドアを開けた。


そこに立っていたのは、怪しい引っ越し3人組のうちの1人、日本人離れした顔の男だった。


「あ、さっきはどうも。今日から隣に越してきた、矢島という者です」

男は意外にもしっかりとした口調で話した。

180センチを越える身長と長い手足は完璧なモデル体型で、肩より少し短い髪にはソバージュがかかっている。


「あ、宮田です。どうも」

「これ、お近づきのしるしにというか、引っ越しの挨拶と一緒にお配りしようと思って。どうぞ受け取ってください」

矢島と名乗る男は、白地に緑のギンガムチェックの包装紙に包まれた品物を僕に手渡した。


「あ、あ、なんかわざわざすいません」
僕は、矢島さんの丁寧な振る舞いに動揺した。

「学生さん?」

「はい、大学生です」

「ふーん…そっか。いいっすね、大学生」

何がいいのかよくわからないが、矢島さんは微妙にくだけた口調でそう言い、僕を上から下まで眺めまわした。

僕はそのねっとりとした視線にただならぬものを感じた。


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