知らなかった僕の顔
僕は、矢島さんに対して抱いてしまった感情を消せないまま、その後の世間話を上の空で聞いていた。


「それじゃ、宮田くん、これから色々とよろしく」

いつの間にか僕は『くん』付けで呼ばれていた。

まあ、彼は明らかに年上だしね…。


それより何より、帰り際に見せた矢島さんの妙な湿り気をおびた視線だ。

思わず僕は目をそらしたけど、なんの意味もない視線とは違う気がする。


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