知らなかった僕の顔
僕は映画を観るのが趣味なので、ゲイの人についてはなんとなく知っている。

特にアメリカの映画には、当たり前のようにゲイの人たちが存在する。

僕は、ゲイの人を偏見の目で見るつもりはない。


映画の中でも、いわれのない差別に苦しむゲイの人を観て、人権侵害だと拳を突き上げたくなることがあった。


でも矢島さん…。
僕はね、女の子が好きなんです…。


ていうか…今、何時だ?


机の上の置き時計を見てギョッとする。

自分が早起きしたことを今やっと思い出した。


6時って…。


こんな時間に引っ越しの挨拶に来るのは、世間的にどうなの…?


僕は矢島さんに、何か得体の知れない恐怖を感じた。

吹き出て止まらない額の汗を何かの強いメッセージ性を感じさせるそのハンドタオルで、何度も何度も僕は拭った。


< 58 / 203 >

この作品をシェア

pagetop