知らなかった僕の顔
そう言いながら僕は思った。


今度待ち合わせる時も、僕は彼女より早く来よう。


そして物陰に隠れて待てば、彼女が来た時にすぐに出ていける。


彼女が不安やストレスを感じることのない、理想の待ち合わせをしてあげられる。


大きな木の蔭に隠れて、じっと彼女を待つ不審者のような自分を想像すると笑えた。

「ん?何?」
僕の笑い声に、彼女が問う。

「ふふ。ごめん、何でもない」


僕らは、お洒落なことで有名な浜辺のレストランを目指して軽やかに歩いた。


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