知らなかった僕の顔
砂浜に座り込んだ僕らは、そのままジッと海を見つめていた。

森若ちゃんが呟く。

「夜の海って…黒いんだね」

「ふふ、黒いね」
笑いがこみあげた。

彼女が幼い子供みたいに感じたからだ。


脅えたように不安げな横顔の森若ちゃんを見つめた。

僕も怖いよ。

でも君が側にいてくれるなら平気だ。


こんなことを口に出して言えたらいいのにな。

いつか言えるのかな。

夜の海に黙らされた分だけ、僕の心の中はお喋りになった。


波の音だけが唸りをあげて、僕らの周りを取り囲むように響いていた。


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