知らなかった僕の顔
「本当にすごいね」
真っ直ぐに海を見つめたまま森若ちゃんが言った。

「そうだね」
僕も海を見つめて答える。

「昼間はあんなに優しく見えるのに、今は私たちを威嚇してるみたい」

「怖い?」

「うん。でも夜の海のことを知ることができて嬉しい。私ね、色んなものを見てみたい」

「例えばどんなもの?」

「普段日常の中で見落としてる小さなことから、世界中のありとあらゆる風景まで全部。欲張りすぎ?」

「いいや。僕も見てみたい」


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