知らなかった僕の顔
「刺激くんさぁ、なぁーんか最近、張りきってるよね」
閉店した客のいない店のレジの前で、売上金を数えながら阿部ちゃんが言った。

「えっ?そうかな?」
たぶん誰の目にも明らかに張りきっていた僕は、我ながら下手くそにとぼけた。


「女だべ?」
阿部ちゃんは、すぐに核心をついた。

「でへへ」

「でへへじゃないよ。つまらん男になり下がりおって。鼻の下伸ばしちゃって、あー気持ち悪い」
阿部ちゃんは、無表情に言った。

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