知らなかった僕の顔
僕は、ムッとする気持ちを無理やり切り替えて、笑いながら冗談で返した。


「阿部ちゃん、もしかして嫉妬してるの?」


阿部ちゃんは何も言わず怒ったような顔で、売上金を入れた金庫を両手に抱え、店の奥の事務所に行ってしまった。


取り残された僕は、掃き掃除の続きをした。


からかうようなこと言って悪かったかな…。


阿部ちゃんが僕をからかうのはいつものことだけど、僕が彼女をからかったのは、さっきが初めてだったかもしれない。


阿部ちゃんは、くだらない冗談を怒ったのだろう。


僕は、赤くなった阿部ちゃんの顔を思い出して反省した。


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