知らなかった僕の顔
サラダを取り分けるのは、意外に難しい。
考えすぎると手が止まる。

全ての野菜をバランス良く小皿に分け、最後にオレンジ色のドレッシングをかける。
なかなかに気を使う作業だ。


長谷川とさなえちゃんは、やや渋々といった様子で、色とりどりにこんもりと盛られたサラダの小皿を僕から受け取る。


森若ちゃんに配るサラダには、よりいっそう集中を高めた。

おいしく食べてもらいたい。

赤ピーマンと黄ピーマンの配色位置にもこだわりながら、甘そうなフルーツトマトを多目に入れる。

手早く黙々と実行する僕に長谷川が、「職人かよ」と言った。


僕は、長谷川とさなえちゃんよりも、5センチは高く盛り付けたサラダの小皿を崩さないように、そーっと森若ちゃんに渡した。


自分の皿には適当に盛った。

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