奈良の都の妖しい話
夜…

(黒矢は…今頃何しているのかしら……はあ…私って最低な女。隣で東宮様が寝てしまわれた途端つい、黒矢のことを考えてしまった…。)

「妃…。」

「東宮様、お起こししてしまいましたか?」

「いや…目を閉じはしたが眠れなくてな…妃…。」

「はい…?……あっ、何を…」

「私達は夫婦ではないか。」

「は、はい…そ、そうですね…。」

「……いくらなんでも、少し無体だったかな…すまない…。」

「そんな…こと…」

「いや………私は……妃との……絆を深めたくて……その……」

(東宮様…照れておられるわ…。)

「…忘れてくれ…もう寝る…。」

「何を仰せになりますか。私は忘れませんよ。…嬉しいですから…。」

「妃………前言撤回だ。」
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