奈良の都の妖しい話
「…あ、あの、さっきのだけど…私、誰になんと言われようと………黒矢が好きだから…!!」

黒矢は美羽子をきつくく抱き締めた。

「黒矢…。」

「俺も…貴女が好きで…愛しくて…たまらない…。」

「黒矢…唐に行ったら私のことは時折想ってくれるだけでいいから…幸せになって。」

「時折想うだけなんて…出来ません…俺は常に貴女だけを想っています。」

「…ありがとう…。」

「…久々に泣きましたね。」

「これは嬉し涙よ。黒矢の気持ちが嬉しくて。」

「可愛い人だ…。」

「初めて聞いたわ。可愛いって。」

「いつも、そのように思っていましたよ。…もう言うことはないでしょうし。」

「うん。」

「どうか、お体を大事に…」

「…うん。」

「いつまでも、御息災で…。」

「…。」

「それでは、姫…」

「……嫌…」

「え…?」

「黒矢、行かないで…!これ以上、離れるのは嫌!!」

「姫…」


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