奈良の都の妖しい話
「…今日の宴は盛大なものになるな…。」

「あ、東宮様。」

「妃…これを。」

東宮は懐から良くできた桃の花をあしらった簪を美羽子の結い上げた髪に挿した。

「……東宮様…。」

「うん。…よく似合う。」

「…ありがとうございます…私、いつも東宮様に頂いてばかりで…私も何かあげられれば…。」

「いや、私は貴女の笑顔があれば…。」

「まあ……。」

「でも、強いて言えば…」

東宮は一度言葉を切り、一寸躊躇った後顔を赤らめて続けた。

「貴女との…御子が欲しい…」

「……あ…。」

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