奈良の都の妖しい話

桃の宴

やがて夜になり、宴が開かれた。

「まあ…素晴らしい桃花ですこと。」

「ええ…本当に。」

満開に咲いた桃の花を前に、楽士達の素晴らしい音が響き渡り、幻想的な空間となった。

「妃、楽しんでいるか?」

「あ、はい。」

「良かった。そなたのために用意した甲斐があった。」

「本当に…ありがとうございます。」

「よい。…それにしても今宵の貴女はいつにも増して綺麗な気がする…唐土の美妃と謳われる楊貴妃にも劣らないだろう。」

「楊貴妃?」

「ああ。唐土の今の皇帝の若い貴妃だ。名は玉環といったかな。昨年帰ってきた遣唐使達が話していた。」

「楊…玉環…。」

(玉環ってまさか紫遙殿の…?貴妃になっていたなんて…。)

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