奈良の都の妖しい話
「さて、他にも伺わなければいけないから失礼するよ。」

「はい。」

「……愛されてるのね。」

「!!…あ、藍鈴さん?」

「ふふ。…そういえば一昨日だったかしら、黒矢がね…」

「黒矢が!?」

「落ち着いて。…こんな詩を詠んだのよ。」

藍鈴は黒矢が桃の木の下で詠んだ詩を一字一句間違えずに詠んだ。

「黒矢…。」

「あの子、また貴女と桃を見たいのね。」

「……あっ、でもどうしてそれを?」

「これで退屈なとき見てるの。」

そう言いながら藍鈴は自身の顔より一回り小さい鏡を出した。

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