奈良の都の妖しい話
「鏡…?」

「望映水鏡ていうらしいわ。自分が見たいものを映すんだけど…」

「ち、ちょっと見せて…。」

「あっ、あんまり長い間見るとその場に行ってしまうわよ。行ったら鏡の向こうへは戻れないの。」

(行ってしまう…?黒矢の元へ…?黒矢…。)

美羽子が鏡を覗くと、切なそうな顔で薄暗い空を見上げる黒矢の姿が映った。

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