奈良の都の妖しい話
(…東宮様…今思えば初めてお会いしたときより随分背が高くなられて…もう少ししたら私を超しそうに…それに、声も低くなられたわ。…もしこのまま東宮様に惹かれることができたら……でも…私の心の中には…黒矢がいる。…どんなに長い間会わなくても、黒矢への気持ちは変わらない…)

「妃、これからは出来るだけ食べなさい。」

「はい。」

「早く私を安心させるように。」

東宮は美羽子の額に軽く口付けを落とし、去っていった。

< 153 / 291 >

この作品をシェア

pagetop