奈良の都の妖しい話
「貴女には……他に想う人がいるのだろう…?」

「!!……な…何故…?」

「いつだったかな…私を見つめる貴女の瞳が…切なそうにしていたのを気づいたのは…。」

「宮様……申し訳ございません。」

宮は静に頭を振った。

「私が貴女を好きになることを止められなかったように…貴女もその人のことを……。私が出家したら…どうか…幸せに…。」

「……。」

(宮様……。私は…優しいこの方を傷つけた……入内してから私を一番に寵愛して下さったこの方を……それなのに私は…宮様が前望んでいらした…御子を産むことさえできない……。)

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