奈良の都の妖しい話
翌日の早朝…

(…目が覚めてしまった…庭でも見に行こうかしら…。)

美羽子は宮を起こさないように寝台を後にした。

(…春とはいえ、まだ寒い……あら?…誰かがいる…?)

「…そこに居るのは何方?」

「っ…。…あっ、美羽子様おはようございます…。」

「まあ、紗々殿…。」

そこに居たのは宮の夫人の一人、紗々だった。

美羽子と一つ違いで、ほぼ同じ時期に宮に嫁いでいたので、何かと言葉を交わすことも時折あった。

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