奈良の都の妖しい話
「待たせたね。」

「いいえ。さ、早く案内して。」

青年―紫遙は自分の背丈の中程もない童子の後を追い、更に奥へ進んだ。

「…ここに生ってるのが脱妖瓜だよ。」

「…これが…。」

「でも…本気で妖を捨てる気?…伏羲様からも聞いたかもしれないけど、妖を捨てるには…」

「わかってる。…もう、決めたことだから…。…ありがとう、瓜守童子。」

「う…うん…。」

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