奈良の都の妖しい話
その日の夜…

「…姫、まだ起きていますか?」

「……黒矢?…ええ。」

「…失礼します。…あれ?」

「あの子は…藍鈴さんが…。」

「…まさか母上は先を読んで…?」

黒矢は思わず赤面したが、一息継いで続けた。

「…姫…今宵はどうか俺に身を預けてくれませんか?」

「……!」

ややあって、美羽子が頷くと、黒矢は彼女に手を伸ばした。

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