奈良の都の妖しい話
初めて見る母の憂いを帯びた微笑みに黒矢は暫し言葉が出なかった。

「…黒矢…。」

突然、藍鈴は黒矢を抱き締めた。

「母上!?…何するんですか?赤子じゃあるまいし…」

「……。」

「…母上…。」

黒矢は抗わず、藍鈴の気がすむまでされるがままでいた。

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