奈良の都の妖しい話
季節は変わり、冬…

かつての東宮孝春親王はこのところ大病の日々が続いていた。

「お加減はいかがですか、宮様。」

「……。」

「宮様…」

「…すまない、大事ないから…。」

「そうは見えませぬ…。今までよりも祈祷を…」

「…よい…私は…もう、長くないだろうから…。」

「そのようなこと…!」

「…一人にさせてくれないか?」

「……仰せのままに…。」

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