奈良の都の妖しい話

哀夜

楊貴妃は一人、月を見ていた。

(どうして…こんなことに…)

養子の安禄山に裏切られ、親族の幾人かも喪った彼女は今の境遇を憂いていた。

(…もう…私には…死しか残されてないのかしら…。)

その時、不意に人の気配を感じ、彼女は振り返った。
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