奈良の都の妖しい話
「…今なら、誰もいないわ…早く、去りなさい。」

紫遙は黙って結っていた髪を下ろし、貴妃に近づいた。

「っ…紫遙さん!」

「玉環…ずっと…ずっと好きだった…。…玉環…。」

「これ以上近づかないで!…私は皇帝陛下の妻よ…。」

「…望んで…そうなった訳ではないのに?」

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