奈良の都の妖しい話
昼下がり・・・

「やはり久々の山は良いものだ・・・おやあそこの店では何か珍しいものでもあるのだろうか・・・あ、あの川では男が魚でも取ろうとしているな・・・ん?・・・あ・・・!!」

黒矢が上を見上げると彼の背丈の三倍近くはある大きな木に美羽子が上って彼を見下ろしていた。

「・・・何してるんですか!姫!」

「何って・・・ここから絶景が見えるから。黒矢も来たら?ふふっ。」

「俺が木に登れないことくらい知っているでしょうに・・・。」

「遠慮しないで、さあっ!!」

次の瞬間黒矢の体が何故か三尺ほど浮いた。

「!?」

「んー!!」

そして・・・百数えるほども無く彼は美羽子のいる枝まで引き上げられた。

「な・・・な・・・な・・・何故・・・?」

「あー疲れた。黒矢って細身のわりには重いのね。」

「そ、それより、これは・・・どういう・・・。」

「驚いた?」

「当たり前で・・・・・・う・・・わあああっ!!高!!」

「ちょ、動かないでよ!!」
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