奈良の都の妖しい話

花を散らす風

それから早くも一月が過ぎた。

「…姫…。」

「…っ、黒矢…。」

「大丈夫ですか?最近姫と話ができなかったので、心配でしたよ。」

「ごめんね…。」

(あのこと、黒矢に言うべきか否か…。)

「姫?」

「なんだか帰りたくなっちゃった…。」

「それは…。」

「わかってる……あのさ、黒矢…」

「何でしょう。」

「黒矢はいつか、誰かと夫婦になるの…?」

「え…」
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