奈良の都の妖しい話
(今宵、東宮様は夫人と過ごされる…今、私は一人…少し、期待してしまう。東宮様は私にとても良くして下さるのに…でも、そうせずにはいられない…。)

「姫…」

(あら、何か聞こえた…?…幻聴…?)

「姫…そこにいらっしゃいますか…?いや、今は東宮妃様…。」

(…!!!この声は…)

「く…黒…矢…?」

「東宮妃様、いらっしゃるのですね…!」

「黒矢…!」

美羽子は御簾のところまで駆け寄った。
< 93 / 291 >

この作品をシェア

pagetop