奈良の都の妖しい話
暫く沈黙が続いた。





「…黒矢…。」

「はい…。」

「前に聞いたよね、私のこと、どう思っているかって…今聞かせてくれる?答えを…。」

「姫…俺は…貴女様のことが…………好きです…。」

「黒矢…私も…黒矢のことが好きよ…。」

美羽子は御簾に手を掛けた。

「…!…いけません、そこからお出になっては…。」

「嫌…またこうやって会えるかわからないのに…。」

黒矢は御簾ごしに美羽子の手に自身の手を重ねた。
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