メモリーズ~I
「再発したんです。12年前の 子宮がんが。
ですが、早期発見のため、助かるでしょう。」
12年前って・・・。あたしを産んだ後だ。
そう、あたしは一人っ子。
母子家庭。 あたしのお父さんは
あたしが物心つく前に 病気でなくなった話を
お母さんから 聞いた。
あれから お母さんはあたしに
精一杯 愛情を注いでくれた。
女ひとつで あたしを。
それは 感じる。 お母さんの
時々のため息。
疲れた表情一つ見せずに 笑顔で。
変なお母さん。 そう思う。
でも、でもね。 お母さんだけは
わかってあげられる。
世界でたった一人だけの あたしの
「お母さんだから・・・・。」
「教えてくれて、ありがとうございます」
あたしがお医者さんに言った一言。
お母さんを助けてください。
お母さんを、あたしの
大好きな 世界一のお母さんを。
お医者さんが 病室を出て行こうとしたとき。
「あのッ。」
「はい。ナンですか?」
「お母さんを 助けてください!
あたしの大好きな 世界1の
頑張り屋のお母さんを。
助けて。 お願い、お願いします」