この汚れきった世界で...
お決まりだが俺たちを呼んだ総督は最上階の7階にいる。
総督とは総会の時に挨拶を交わす程度で、まともに話したことはないが相当の曲者らしい。
――――――面倒なことは嫌いだが、軍隊長の俺に対して総督自らの要請だからまぁ仕方ない。
だが、軍隊長や総督自らの要請じゃなかったら絶対行かないぞ。
「お、おい...。大丈夫か?」
――――――いや、もしや何かいい報告か!?ならば、胸を張って乗り込もうじゃないか!
総督自らの要請だし、これは期待してもいいかもしれない!!
「おーい...レ、レイ?」
――――――が、しかしだぞ。もしも、ジョエルの言った通り特攻命令だとしたら...。
総督自らの要請だし、ありえないこともないぞ...。こ、これは、俺の命の危機か!?
「....。なぁ、そこのお前。『ここに心あらず』ってやつかコレ?」
「まぁ、そうなりますね。...それにしても、百面相がお上手で」
ジョエルは青年の返答に大きく頷いた後、俺の頭を小突いた。
「痛っ!なにすんだ!?」
小突かれた頭部をさすりながら怒鳴ると、ジョエルは親指を立てて"着いたぞ"と合図をした。



エレベーターを降り廊下を突き当りまで歩いて行くと、真っ白な壁に小さな黒い点が書かれていた。...書かれていたと言うより、まるでインクか何かをこぼした時に飛び散った小さな点のようだ。
青年はその点に、首から下げていた十字架のネックレスの先端部分を当て、数歩下がった。
「何をしている?」
その問いかけに、青年は振り返り軽く笑みを返してまた前を向いた。
数秒して、点の直径1mくらいの幅の壁が上に自動で上がっていき、約2メートルくらい上がったところで止まった。
人ひとり通れるくらいのセキュリティードアというやつだ。

青年は先に入るなり、総督と思われる相手に連れてきたと報告し了解を得ると、俺たちを中に通した。




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