魔女の報酬3~封呪の守り人~
 ロランツは、メディアの抗議をものともせず、そのまま庭の四阿を目指し、そこでやっと彼女を下ろしてくれた。

石造りのベンチに腰を下ろすとメディアはようやく一息をついた。今日はわずかの間に色々あった気がする。王妃の肖像画を見て両親の話をして、ロランツの妹に会って女官長に拉致されかける。いや、実際に拉致したのはロランツだったけど。

「とりあえず、礼は言うわ。いいように、着飾らされるのは、まっぴらなんだから」

 と、当然のごとく隣に腰掛けたロランツが、何やらもの問いたげにメディアをのぞきこむ。

「何よ?」

「いや、君も女の子なのに、なぜおしゃれをいやがるのかと思って。妹は草原育ちだから、おしゃれというより束縛を嫌っているみたいだが」

「着飾ってもみっともないだけでしょ、私は」

 若干の妬みをこめて言う。このロランツの妹だけあって、みすぼらしい格好をしていてもシャリアも人目を奪う美少女だった。
きちんとした格好をすれば、目を瞠るほどの貴婦人になるだろう。

「そんなこともないと思うが」

「手間をかけるぶん、無駄だって。それに、いろいろと支障が……」

 はっとして、メディアは口に手を当てる。それは、本来、余人にはもらしてはいけないことだった。

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