魔女の報酬3~封呪の守り人~
 魔法院の院長は、メディアにはひどく甘い。まるで大きな負い目を感じているかのように。あれは、いったいどういうことなのだろうか。

 お人好しそうでいて、なかなかにしたたかであの手この手で攻めてみても、あのまだ若い院長はなかなか白状をしない。

(搦め手でも駄目だし、不意をついても駄目。あとは、泣き落としくらいか?)

「聞いているのですか、陛下?」

「あっ? ああ、聞いているとも」

 姫を兄王子の元に案内してきた侍従長が、戻ってきていた。
 王はその歩く謹厳実直に、いつものにこにこ顔を向ける。

「ときに、ひとつたずねてもよいか?」

 何となく、悪い予感を感じる侍従長。
 彼もまただてに長く国王に仕えているわけではない。
 背筋に薄ら寒いものを感じざるを得ない。
 しかし、見かけだけはごく無邪気にたずねてくる王にはこう応えるしかなかった。


「もちろんです」

「たとえば、あるところにな、たいそうな美姫がおるとする」

「はあ?」

「どうしても落としたいのだが、搦め手も駄目だし、不意打ちもきかない。そんなとき、お前ならどうする?」

 侍従長は目を瞠った。王はたいへんな愛妻家で、王妃は遠い草原に戻っていったというのに、側妃の一人も迎えなかった。しかし、王も人の子、どこぞにお気に召した、女性が出来たのか。

 
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