魔女の報酬3~封呪の守り人~
 おそるおそる尋ねる。なんだかろくなことにならない気がした。

「それはどこの姫君ですか?」

 王は青い目を丸くし、大仰に手を振った。

「たとえだ、たとえ。本気にするな」

 侍従長はしばらく考え、無難な答えを言うことにした。

「ああ、私でしたらですね。それはもうまっ正面から、誠心誠意あたるしかないと思いますが」

「そうか」
 
 王は、ぽんと手を打った。

「その手があったか」

 うれしげな王の様子に、思わず侍従長はたずねてしまった。

「で、どこの姫君で?」

 王は席を立ち扉にむかっていたが、いきなり振り返った。
 にっこりと邪気のない笑みを見せる。

「魔法院のな、ラムルダ院長だ」

 凍りつく侍従長。

 一瞬後、ばたりと、扉の閉まる音に我に返った彼は、顔をひきつらせながらも王の後を追った。

「ちょっとっ、待って下さいっ!」

 歩く謹厳実直。侍従長ソール。当年とって五十六才。
 ニコニコ大王の最古参にして最大の遊び相手、もとい犠牲者であった。

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