魔女の報酬3~封呪の守り人~
「もしかして、お兄様、国のために我が身を犠牲にでもしたのかと思って。でも、あの様子を見ると、どっちかというとお兄様の方がめろめろね」

「あれは魔女に魔法をかけられたのだと、言う者もおります」

 苛立ちの混じった厳しい言葉に、シャリアは可愛い顔をしかめた。

「女官長はお兄様が魔法をかけられていると思うの?」

 女官長は、首を横に振った。

「私は、もしそうだとしたら、それでもいいと思っています。ロランツ様は、メディア様の前ではごく自然に笑われます。見知らぬ人の前では、人形のように無表情を通されていた方が、ですよ。はたで見ていても痛々しいほどでした。もし、これが魔法による変化だとしても、私は歓迎します」

 ふいに、女官長は悪戯っぽく笑った。そうすると、年よりも若く見える。

「それに、女の子は誰しも殿方に魔法をかけるものですよ」

「ドレスと宝石と笑顔で?」

「いいえ、心根で、ですよ」

 シャリアは跳ね起きると、女官長に首に抱きついた。

「姫様」

「あれは魔法ってことは絶対にない。私が保証する」

 だって、私たちはフィアールの民だから。
 たとえ、草原から遠く離れていても。

 創世の女神の加護をもって、生まれてきたものだから。
 魔法に心を奪われても、操られることなどありえはしないのだ。

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