魔女の報酬3~封呪の守り人~
 あんまり早くに寝たものだから、シャリアは夜明け前に目が覚めた。
 顔を洗い、髪を櫛けずると、編んでお下げにする。

 用意されていたドレスには手も触れない。

 草原から着てきた服は、すでに処分されたようで見つけられなかったが、さいわい乗馬服があった。動きやすいそれを身につけると、シャリアは元気いっぱいに部屋から飛び出した。

 もともと草原を駆け回って育った娘である。湯あたりなど一晩も眠れば、すっかり回復している。

 銀のお下げを後ろになびかせて廊下を走るシャリアの目指す先は、メディアの居室である。寝起きをおそう算段であった。

「お姉様、おはようっ!」

 元気よくシャリアは、メディアの寝室に続く扉を開いた。
 しかし、ベッドはもぬけの殻である。

「お姉様?」

 見ると、バルコニーへと続く窓が開け放されたままである。
 シャリアは何のためらいもなく、バルコニーに出た。

 夜明け前の冷たい風が、彼女の銀の髪を揺らす。
 ふと青い瞳が、足元に何かを捉えた。

「きゃああああっ!」

 知らず、悲鳴を上げていた。
 腰を抜かして、すわりこんでしまったシャリアの視線の先。

 そこには、燃え盛る炎のような赤い髪。
 切り落とされたまま、床に広がっていた。

 流れる血のしみのように。


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