魔女の報酬3~封呪の守り人~
 吸魔樹は二週間ほど前に起こった事件にかかわった魔物だ。あのとき自分は魂を盗られて、寝こけるという失態を犯してしまったため、彼はそのものを見た記憶はないが、ドラゴンはいまだ記憶に新しい。

「ドラゴンはどこかに隠れ住んでいたのかもしれない。吸魔樹は種として残っていた可能性もある。だが、今度はこれ。いくら何でもこんなことが、偶然に立て続けに起こるはずがない」

『黒魔法の世』の終わりは、その当の『創られしもの』たちの手によってもたらされた。傍若無人に世界を支配していた魔法使いたちは次々に倒された。そうした後、彼らは魔界に去っていってしまったはずである。

「魔界は封印されているはずですね」

 あの戦いを生き延びた魔法使いたちは、魔界へとつながる戸口を、自らの強大な力の源を、永遠に封じた。そのはずである。

「ドラゴンが出現したときにも、吸魔樹の事件の後にも結界に異常はありませんでした。けれど……」

「けれど?」

 シャリアが先を促す。

「わずかですが、メディアの力の痕跡が空間に残っています。それは、北に向かっている、『果ての森』へ、と」

「ラムルダ殿」

 強い決意の響きを帯びた声が、院長を呼んだ。
 もうロランツ王子には、先ほどからラムルダやシャリアに感じさせていた危うさは、かけらもなかった。

「はい」

「行こう、『果ての森』に。そこに答えがあるはずだ」
< 51 / 71 >

この作品をシェア

pagetop