魔女の報酬3~封呪の守り人~
 メディアが慌てたのは、何も鎖につながれているからではなかった。そんなものは、ふだんの彼女なら何の問題もない。部屋ごと破壊してしまうかもしれないが、人さらいの家の心配をしてやる義理はないのだ。

 メディアはロランツに宝石や貴金属類が魔法使いの弱点となりえることを話したが、実は、それを単に身につけたくらいでは、魔法使いは多少不便な思いをする程度でしかない。

 が、四肢にはめられた銀の輪。それに埋めこめられた石の種類と配置。
 それは、封の呪陣を意味していた。魔力を封じる呪陣。これをかけられたまま無理に魔法を使おうとすれば、力は発現することが出来ないまま、当の本人の体の中を駆け巡り、暴走してしまうだろう。揮おうとした力が大きければ大きいほど、多大なダメージを受けることになる。

 つまり、このままではメディアはふつうの何の力も持たない女の子も同然だった。

(冗談じゃない!)

 何とかしてリングをはずそうと試みる。一つでもはずせれば呪陣は崩れる。

 しかし、それはどうやってはめられたものか、皮膚にぴったりと吸いついているようにびくとも動かない。無理に差し入れようとした自分の爪の方が割れ、手首の皮膚にも傷がつくばかりである。

 それでも、あきらめずに悪戦苦闘していると、

「あ、目が覚めたんですね」

 ふいにまだ幼い少年のものとおぼしき声がした。
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