サヨナラのカタチ
やっと、気持ちも落ち着いてきて。
良次の匂いがするハンカチが涙で濡れていることに気づく。
そして、思い出す。
ニコッといつものように優しく微笑んだ良次が
『さよなら、久美』
と、最後の言葉を言い放ったことを。
胸がぎゅーっと締め付けられるように痛んだ。
また、涙が溢れそうだった。
だけど、堪える。
そして、私もニコッと微笑んで、誰にも聞こえないくらい小さな声で呟く。
「さよなら…良次」
きっと、私の生涯でもっとも最高のオトコであろう、良次。
こんなどうしようもない私と付き合ってくれて、
ありがとう。
レジの前で
「あ、すみません。
お会計を」
と、言う。
すると店員さんは
「お連れ様がお支払いは先ほど済まされましたよ」
なんて微笑んで言う。
良次らしいや。
お店を出てふっと笑う。
そして彼には届かない一言をもう1度、呟いた。
「…さよなら、良次」
―第1話 完―