サヨナラのカタチ
「……ごめん、別れよう」
そう言ったのは紛れもなく、この僕。
言ってすぐに後悔したことをキミは知らないだろう。
「そうだね、私もそう思ってた」
そんな答えが返ってくるだなんて、僕は思っていなかったんだ。
「これ…返すね」
久美は左手の薬指につけていた指輪を僕の前にさしだす。
これは、僕たちが付き合い始めて2年経ったときに買ったペアリングだ。
「ねえ、最後に1つだけ、聞いてもいい?」
久美がワインの入ったグラスを静かに回しながら言う。
「どうしてさっき、ごめん、なんて言ったの?
それを言うのは本当なら、私のはずだよ?」