サヨナラのカタチ
「今もまだ、好きだよ、詩織のこと」
どうしてそんなことを言うのだろう。
別れようと言ったのはあなたなのに。
「だけど、詩織はそうじゃないんだろ?」
…え?
どうして?
どうしてそうなっちゃうの?
「なあ、詩織。
男ってさ結構心配性なんだよ。
すぐに不安になるんだよ」
健太くんが何を言いたいのか私には分からなかった。
「その顔は分かってないみたいだな」
ふっと悲しそうな顔で健太くんが笑った。
「俺たちが付き合い始めてから、
詩織、俺に好きだ、って言ったことあった?」
頭の中で付き合っていた半年間を思い出す。
「…ない、ね」
心の中ではいつも言っていた。
体育で爽やかに走るあなたに『好き』
授業中の寝顔に『好き』
恥ずかしそうに私の手を握るあなたに『好き』
だけど、考えてみると
口に出して伝えたことはなかった。