サヨナラのカタチ





「そういうことだ。

俺、もう詩織の気持ちが分からない。


だから、別れようと思ったんだ」


また悲しそうに笑う健太くん。



なんてバカなんだろう、私は。

口に出さなくちゃ、相手に気持ちは伝わらないのに。



「詩織。

次に好きな人ができたときはちゃんと、その人に思ってること伝えるんだぞ。


そうしないと、同じことになるからな」


「…好きっ!」


唐突に放たれたその言葉に健太くんは驚いて目を大きく開く。

だけど、ふっと笑ってこう言った。



「もうちょっと早くその言葉を聞けてたら俺たちは、別れなくてすんだかもしれないな」


それは、もう2度と、2人が始まることがない。

そういう意味で。


ああ、もうこの恋は終わったんだ。


そんなことを思って1人、悲しくなる。



「泣くなよ、詩織。

お前には笑顔と照れた顔がお似合いなんだから」


いつの間にか私の横に立っていた健太くんはポンポン、と優しく私の頭を撫でた。



「よし、じゃあ詩織。

さよなら…だ。


女の子としての詩織と、

男としての俺に。」


健太くんが手を差し出した。

その手を握る。


相変わらず、健太くんの手は温かい。



「さよなら、詩織」











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