サヨナラのカタチ





「先生…先生は幸せですか?

久美先生と別れても、今、幸せですか?」


私は相当無神経だろう。

良次先生の傷口に塩を塗りたくるようなものだ、この質問は。



「そうですね…僕は、幸せですよ。

だって、僕のクラスはどんなときも笑顔であふれているんだから」


良次先生は爽やかに笑ってみせる。



「別れ話をしたときは、僕の出した答えは間違っているのかもしれない。

そう思ったけど。


だけど、もう後悔はしてません。

ちゃんと、久美に…サヨナラ、って言えたから」


俯いた先生の横顔は見ているこっちの胸が痛くなるくらい切なくて。

思わず、さっきの自分と重ねてしまった。


きっと、私もこんな顔をしていたんだろう。



「さあ、もう遅いですし、帰りましょうか、詩織さん」


先生に促され立ちあがる。



「そう言えば、ちゃんとサヨナラ、って言いましたか?」


「え?」


先生の問いかけを聞き返す。



「さよなら、そう言えたなら

きっと、あなたは大きな1歩を踏み出せる。


今はまだ、そんな勇気を持てなくても。

それでもいいから、声に出すんです。


幸せをくれたあの人に向けて。

さよなら、ありがとう、って。」










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