サヨナラのカタチ
早朝4時半。
カチャッと鍵が開く音がした。
俺は慌てて、ベットに横になって、
背中をドアに向け目を瞑った。
しばらくリビングを行ったり来たりしている足音が聞こえていて。
それが止んだかと思うと、寝室のドアが開く音がした。
ドクッドクッと心臓が大きな音をたてる。
「…翔馬」
今、理子がどんな顔をしているのか。
すごく、見たかった。
できれば抱きしめて、ごめんな、って言いたかった。
だけどなぜか体が動かない。
見えない何かに縛られているような、そんな感覚。
「…ごめんね」
なんで。
なんでお前が謝るんだよ。
誰がどう考えたって
謝らなきゃいけないのは俺のほうなのに。
それから理子はクローゼットをゴゾゴゾと物色していて。
そして、俺の目の前に立った。
全神経が理子に集中して。
体が熱くなって。
ドキドキの速さが増して。
目を開けたい衝動に駆られたけど。
だけど、そんなこと、できなかった。
だってきっと、今理子の顔を見てしまったら
理子をめちゃくちゃにしてしまいそうだったから。