サヨナラのカタチ
奏は、勉強がよくできた。
でもなぜか俺が受け持っていた英語はとてつもなく、できなかった。
「なあ、なんで英語だけこの点数?」
「そうですね…教え方が悪いんじゃないですか?」
その言葉にムッとした俺を見て
「冗談でしょ…」
と呆れた顔で呟く奏。
奏は、俺を『よーたくん』とは呼ばなかった。
俺はなぜか生徒たちから下の名前の陽太と呼ばれた。
でもその呼ぶ声を文字にするとすれば『陽太』ではなく『よーた』が正しい。
「先生、どいてください。
通行の邪魔です」
入り口で大欠伸をしている俺へそんな言葉が突き刺さる。
「あ、悪い」
「それと、さっきの顔、間抜けでした」
「か、奏ぇ!!」
奏はいつだってそうやって俺で遊んでいた。
「あ、よーたくんだ!
奏!よーたくんがいるよ!」
「ふーん。
行きたいなら行ってくれば?
あたし、先帰るから」
奏は絶対に自分から俺に喋りかけることはなかった。