サヨナラのカタチ




「…バカっ!

先生の…バカっ!」


俯いていた奏はそう大きな声で言うと顔を上げた。

その目からはポロポロと大粒の涙が零れていて。



「なんで…っ!

なんで…そういうこと言うの!?」


奏…怒ってる?



「教師として、なんてズルイよ!

私は…私は1人の女として先生のことが好きなのに…っ!」


奏は顔を歪めて泣きながら怒鳴る。


俺、間違えたのかな。

さっきの言葉、伝えないほうが良かったのかな。



「そんなこと…言われたら…っ…先生のこと…忘れられないじゃん…っ!」


「…奏、ごめんな」


やっぱり伝えるべきじゃなかったんだ。

俺は、奏が次の恋に進んでいけるように、厳しい言葉を言わなきゃいけなかったんだ。



「…なんでっ?!

なんで…謝るのっ!」


「かなで…」


相変わらず、奏の大きな目から涙が勢いよく流れていて。

胸が締め付けられる。










< 53 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop