サヨナラのカタチ
「久美、今日で終わりにしよう。
…全部。全部。」
ジワジワと涙が押し寄せる。
「…ヤだよ。
イヤだよ、良次」
「…え?」
ボロボロと涙を流す久美が言った。
イヤだ、と。
「なんで?
さっきは私も思ってた、って言っただろ」
ホントは嬉しいくせに。
僕の中のもう1人の僕がそう言って笑った気がした。
「だって、良次が好きなんだもん」
そんなの、理由になると思ってるの?
「だけど、浮気しただろ」
「それは…っ…」
久美の言葉が詰まった。
「久美。
ホントのことを言おうと思う」
僕の言葉に久美は顔を上げた。
この店が照明が暗くてよかった。
誰も、久美が泣いていることに気づかないから。
「僕だって、本当は…別れたくなんかないよ」