サヨナラのカタチ
「俺、愛子が好きなんだよ。
付き合う理由ってそれだけじゃダメか?」
普通ならダメじゃない。
でも、私たちの場合はダメだ。
それではなんの解決にもならないんだから。
「お願い、浩輔。
今のままだと私のせいで浩輔がダメになっちゃうの。
それだけは絶対にイヤだから。
だから、別れて…私のために。」
全ては罪悪感から逃げたいがための別れ、だ。
浩輔をプー太郎にさせてしまったら、それは私の責任。
そんな責任、負いたくないから。
だから私は、別れを選んだ。
お金を払うことに本当はなんの不服もない。
浩輔の生活費を稼ぐことになんの不満もない。
ただ、責任逃れしたいだけ。
「なんだよ…それ。
んな私のために、なんて言われたら
いつまでも別れたくない、なんて我が儘言えなくなんだろーが」
「ごめん」
「謝んなよ」
「うん…ごめん」
「だから謝んなってば」
「うん…」
そこから会話が途切れた。
リビングにはひたすら時計の針が進む音だけが響いていた。