サヨナラのカタチ
「…うん、分かった」
ニコッと微笑む浩輔。
別れたくない。
そう言うのは簡単だ。
引き留めるのも簡単。
だけど時には我慢して突き放す勇気が必要で。
それが今だ、ということを私ははっきりと認識していた。
「サヨナラ、浩輔」
「サヨナラ、なんて言うなよ」
「サヨナラ」
「愛子ーぉ!冷たいっ!」
「じゃあね」
「もう…ホント頑固だな」
靴を履いた浩輔は振り返り私の頭に手を置くと
「またな」
そう言って笑い、次の瞬間にはもうドアを開けていて。
あれだけ別れたくない。
そう言ってたくせに最後はすんなり行っちゃうのね、
なんて未練がましいことを思ったりしちゃって。
それでも動き出しそうな足を必死で抑え込み、浩輔の背中を見送る。
「…またね、浩輔」
そう無意識に呟いていた
―第5話 完―